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No.25「インソムニア」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.25  2008.6.9発行 
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2002年/アメリカ 「インソムニア」より
舞台は白夜のアラスカ。
主人公のベテラン警察官ウィルが、
捜査中に誤って相棒を射殺してしまった。
放心状態のウィルは、罪悪感に苛まれながらも、
自分が相棒を射殺したことを告白することができない。
実はウィルには、内務調査による嫌疑もかけられていた。
かつてウィルがかかわった捜査に不正があったらしいのだ……。
そのこともウィルの精神的な重圧となる。
ウィルは不眠症(インソムニア)に陥り、
次第に精神的に追いつめられていく……。
そんなある朝、ウィルを敬愛する地元の女性刑事エリーが、
朝から疲れ切った表情のウィルに、唐突にこう言った——
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     「よい警官は謎解きで眠れない。
      悪い警官は良心の呵責で眠れない」             
     
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実はこの言葉は、かつてウィルが言った言葉らしく、
それをエリーが覚えていたのだ。
かつての自分の言葉に、思わずハッとするウィル。
エリーがどういう意味でこの言葉をウィルにかけたのかは分からないが、
ウィルにとっては、目が覚めるような言葉だったに違いない。
まるで真実を見透かされたかのような。
     「よい警官は謎解きで眠れない。
      悪い警官は良心の呵責で眠れない」  
警察官という仕事は、権力との付き合いが求められる仕事だ。
権力的であるということは、自由がきくということであり、
結果、不正に手を染めやすい環境ということができる。
権力がもたらす自由さが、
理性や良心や道徳心のタガをゆるめてしまうのだろう。
ゆえに、権力的な仕事に就くときには
必要以上に、自分を律し、理性を働かせ、慎重を極めなければならない。
それは、権力をもつ以上、当然しなければいけない責務ともいえる。
警察官、あるいは政治家などもそうだし、
広義にとらえれば、官僚や先生などもそう。
全権を掌握する企業の経営者なども、
権力との付き合いが求められる仕事といえるだろう。
不正によって得られるものは、甘い蜜ばかりではない。
なぜなら、不正を働いたその瞬間から、良心の呵責がつきまとうからだ。
それがどれだけツラく、苦しいものかは、
一度でもウソをついたことのある人なら、
多少なりとも想像がつくだろう。
人に迷惑をかけない程度のものならまだしも、
他人を陥れたときの良心の呵責は、尋常ではないハズだ。
人を陥れてまで、のほほんと生きられるほど、
元来、人間はお気ラクにはできていないのだ。
賢明な人であれば、それが(良心の呵責を抱えることが)
どれだけ割に合わないことか認識済みだろう。
良心の呵責を抱えることは、その人の人生において大きな足枷となる。
不正によって手に入れられる甘い蜜ごときで、つり合いが取れるものではない。
とはいえ、権力との付き合い方を誤り、
不正に手を染める人は後を絶たない。
自分を律せない人間にとって、
権力とは、自身を陥れる悪魔のようなものかもしれない。
「インソムニア」の主人公ウィルは、
そんな悪魔に魂を売り飛ばした結果、
良心の呵責で眠れなくなってしまった。
能力のある優秀な警察官であるにもかかわらず、だ。
ところが、不気味なことに、
世の中には、良心の呵責を感じない人や、
良心という概念すら持ち合わせていない人もいる。
彼らは、良心の呵責によるツラさや苦しみを感じることがないから、
不正に対する罪悪感が乏しく、
また、犯した罪を反省することもない。
もしかすると、そういう人が増えているのかもしれない——
と思わせるニュースが、あまりに多すぎる今日この頃だ。
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●編集後記             
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「インソムニア」の監督は、
物語を逆行させた斬新な作品「メメント」で、
注目を集めたクリストファー・ノーランです。
本作では名優アル・パチーノのほか、
ロビン・ウィリアムズやヒラリー・スワンクなど、
実力派の俳優を起用しています。
ミステリー/サスペンスとしての質は凡庸かもしれませんが、
白夜と主人公の葛藤を対比させた描写をはじめ、
心理ドラマとして強い印象を残す作品です。
主人公のウィルが苦悩から解放されるラストシーンに注目です。
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■銀幕をさまよう名言集! No.25「インソムニア」
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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