No.35「2001年宇宙の旅」
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銀幕をさまよう名言集! No.35 2008.10.10発行
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1968年/アメリカ 「2001年宇宙の旅」より
スタンリー・キューブリック監督が放った
映画史上に輝く不朽の名作だ。
主人公のボーマンが乗る木星探索用の宇宙船は、
人工知能を備えるコンピュータが完全制御している。
コンピュータの名は「HAL9000(通称ハル)」。
彼は人間ともふつうに会話ができる。
ある日、ハルが、
宇宙船のある部分の故障を指摘するが、
調べた結果、故障らしきものは見あたらなかった。
ボーマンは、ハルの不調について仲間と密談し、
“ハルの回路を切ることもありうる”
その旨を確認し合った。
ところが、ハルはこのときの密談を、
読唇術で読み取っていたのである。
ハルはボーマンらを船外に追い出し、
そのままロックアウトしてしまった。
(船内で冬眠していた人間も殺してしまう)
ボーマン:「ドアを開けろ。ハルどうした?」
ハル:「——」
ボーマン:「聞こえるか?」
ハル:「——」
ボーマン:「返事をしろ」
ハル:「聞こえてますよ」
ボーマン:「進入口を開けろ」
ハル:「それはできません」
ボーマン:「なぜだ?」
ハル:「理由はお分かりのはずです」
ボーマン:「何の話か分からん」
ハルは毅然とこう言う——
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「回路を切断するつもりでしょ。
許すわけにはいきません」
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ハルにとって「回線の切断」は「死」を意味する。
つまり、このシーンは、
死を恐れたハルが、
反乱に転じた瞬間といえる。
コンピュータの頭脳が高度化していくのは、
素晴らしいことかもしれないが、
万が一、コンピュータが人間同様の感情を得た場合、
このような反乱もありうるのかもしれない。
「2001年宇宙の旅」と同じ1968年に作られた
名作「猿の惑星」は、
人間と猿の支配関係を逆転させた、
ショッキングな内容が話題を呼んだが、
「2001年宇宙の旅」のこのシーンでは、
人間とコンピュータの支配関係が逆転している。
人間がコンピューターに追い出されるという状況は、
「猿の惑星」で首を鎖でつながれた人間の状況と同じだ。
人間は常に優位を得ようとする。
人間以外のあらゆるモノから。
猿に対しても、コンピューターに対しても。
最近では、どこかの国が、
人工的に降雨を誘発する行為に出たが、
今や自然からも優位を得ようとしている。
だが、人間があらゆるモノから優位を得ることに
間違いはないのだろうか?
そこに、おごりや慢心はないのだろうか?
キューブリック監督が用意した
コンピュータの反乱というシーンには、
地球の支配者を気取る人間への
皮肉と風刺が込められている。
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●編集後記
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本作「2001年宇宙の旅」 は、
高品質かつ斬新なSFX技術が、
のちのSF映画に大きな影響を与えました。
と同時に、哲学的なテーマが、
深い余韻と感慨を残す1本でもあります。
この映画はでは説明描写が
意図的かつ徹底的に省かれているため、
難解な映画として受け取られがちです。
一度見ただけでは、
ストーリーが把握できない方もいるでしょう。
こういう映画は、
説明されていない描写を、
観客の一人ひとりが、
自分の思考をもって補完する必要があります。
それなりに頭を使いますが、
頭を使って考えてこそ、
深く味わえる作品というのは、
間違いなくあると思います。
キューブリック監督が
セリフや説明描写を最低限に抑え、
視覚表現を重視したのにも、
きっと狙いがあったはずです。
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■銀幕をさまよう名言集! No.35「2001年宇宙の旅」
マガジンID:0000255028
発行者 :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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