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No.47「ドルフィンブルー ~フジ、もういちど宙へ~」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.47  2009.5.8発行 
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2007年/日本 「ドルフィンブルー ~フジ、もういちど宙へ~」より
原案は「沖縄美ら海水族館」のスタッフが、
ブリヂストンの協力を得て取り組んだ
世界初の「人工尾びれ再生プロジェクト」の実話。
やる気満々で「沖縄美ら海水族館」に赴任した
新米の獣医・植村だったが、
そこで待っていた仕事は、
飼育員と同じイルカの世話であった。
植村は想像していた仕事と異なる現実に、
苛立ちを抑えきれない。
赴任後ほどなくして、
植村は上司の仲村課長に
不満をぶつける。
植村獣医:「課長、俺はいつまで
      こんなことやらなきゃなんないんですか?」
仲村課長:「ん?」
植村獣医:「エサ切りにエサやり、プール掃除にバケツ洗い。
      全部飼育員の仕事じゃないですか」
仲村課長:「じゃあ、おまえは何がやりたい?」
植村獣医:「イルカの治療をしたり、検査データを…」
植村獣医の言葉を遮り、
仲村課長が声を荒げる――
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     「おまえ! イルカのことどれだけ分かってる?
      飼育ができて、しっかりイルカと付き合えなければ、
      治療も検査もできやしない。
      データを見るだけの獣医ならウチはいらない」
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仲村課長:「……それが館長の方針だ」
植村獣医:「……」
白衣を着て、
動物たちの健康状態をチェックし、
ときに必要な検査や治療を施す。
それが、獣医という仕事に対して、
私たちが抱いているイメージだろう。
だが、「沖縄美ら海水族館」では、
獣医にも飼育係と同じ仕事をさせる。
その理由は、
先に挙げた仲村課長のセリフの通りだ。
獣医が飼育係と同じ仕事をするなんて本末転倒だ、
そう思う人もいるだろう。
でも本当にそうだろうか?
人間相手の医師で考えてみよう。
医者は患者の検査データを見て、
診断を下し、
必要な治療を行う。
それはきっと間違いではない。
たとえば、
胃痛を訴える患者に、
胃薬を処方し、
症状が改善されたなら、
それは、すばらしいことだろう。
だが、もしこの医師が、
患者の生活習慣(食生活、睡眠、運動……)から、
仕事内容、家庭環境、趣味、性格……等々まで、
ライフスタイルを
事細かに把握していたならどうだろう。
もしかしたら、
胃薬を処方するだけでなく、
胃痛の原因かもしれない
「仕事上のストレス」を指摘できるかもしれない。
胃痛の原因かもしれない
「刺激物の取り過ぎ」を指摘できるかもしれない。
あるいは、
胃痛の原因かもしれない
「ダイエットによる過度な空腹」を指摘できるかもしれない。
医師としてどちらが優れているかは、
言うまでもないだろう。
     「おまえ! イルカのことをどれだけ分かってる?」
仲村課長のセリフとは、
つまりは、そういうこと。
専門を極めようという
プロとしての心構えを説いたものといえる。
獣医や医師が、
「俺が検査データを見れば、すべてが分かる!」
とイスにふんぞり返っているだけだとしたら、
その獣医や医師のプロとしてのレベルは、
そこまで止まりだろう。
このことは、
どんな仕事にも言えることだ。
自分の仕事に対して、
もし「完璧だ」「一人前だ」「一流だ」
「もう学ぶべきこと、やるべきことはない」
と思うことがあったら、
それは成長を妨げる危険信号にほかならない。
そんなときこそ、
     「おまえ! △△のことをどれだけ分かってる?」
というセリフを思い出してほしい。
△△に自分の職業を当てはめつつ。
かつてイチローが、
本塁打の世界記録保持者である王さん(前ダイエー監督)に、
「現役時代に、バッティングが簡単だと思ったことはありますか?」
という趣旨の質問をしたところ、
王さんは
「そんなことは思ったこともない」
と答えたという。
それを聞いてイチローは安心したという。
つまり、“世界の本塁打王”も、
“世界の安打製造機”も、
自分の仕事が簡単だと思ったことはないのだ。
     「おまえ! バッティングのことをどれだけ分かってる?」
と訊かれたら、
ふたりはおそらく、
     「いや、まだまだ分からないことだらけです」
とでも答えるはずだ。
プロとして道を極める姿勢というのは、
きっと、そういうことなのだろう。
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●編集後記             
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本作「ドルフィンブルー ~フジ、もういちど宙へ~」は、
たった一頭のイルカを救うために、
多くの人間が熱意をもって、
「人工尾びれ再生プロジェクト」に挑んだ物語です。
実話にもとづいたドラマゆえに、
心に突き刺さるものがあります。
たった一頭のために、
なぜそこまでするの?
と思う人もいるかもしれませんが、
たった一頭のために、
人間が知恵を出し合い、
誠意と情熱をもって、
粘り強く、
汗水を流したことに、
大きな意味があるような気がします。
獣医や飼育員らスタッフは、
イルカの命も人間の命も、
同じ「大切な命」として扱います。
そこに深いメッセージが込められています。
小さな子供たちにも見せてあげたい作品です。
監督は前田哲。
主人公の植村獣医を松山ケンイチが演じています。
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■銀幕をさまよう名言集! No.47「ドルフィンブルー ~フジ、もういちど宙へ~」
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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