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映画批評「有頂天ホテル」

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2006.1.21 映画批評
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公開中の映画「有頂天ホテル」。
監督・脚本:三上幸喜 製作:亀山千広 エグゼクティブプロデューサー:石原隆 撮影:山本英夫 美術:種田陽平 音楽:本間勇輔 出演:役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子、オダギリジョー、麻生久美子、YOUほか
日本を代表する脚本家で、監督としても、世界に誇れるコメディ映画を飄々と撮ってしまう三上幸喜。そんな彼の新作は、「ラヂオの時間」「みんなのいえ」に続く4年ぶりの第3弾。
物語の舞台は大晦日のホテル。年明けまであと2時間。お客さんに喜んでもらおうと企画した「カウントダウンパーティ」に向けて慌ただしく準備をするホテルマンをせせら笑うように、続々とホテルに集結するひとクセもふたクセもあるワケありの宿泊客たちが、まあ引き起こすこと、予測不能なトラブルのかずかず。


生のラジオドラマというスタジオ空間を描いた「ラヂオの時間」同様に、今回も舞台を「ホテル」という限定された空間にフィックス。背景をできるだけ簡素化させて、見る人の興味を場面の一つひとつに集中させようという三上幸喜一流の仕掛け——かどうかは不明だが。
三上映画の面白さの一つは、オールスターキャストの妙だろう。タイプのまったく異なる人間同士が交わるところには、必ずといっていいほど不和や衝突が生じる。もちろん、総じてその不和や衝突に、笑いの着火装置が仕込まれているのだが、当事者の個性がこれまた半端なくエキセントリックだったりするものだから……なおさら相乗的な笑いが生まれるのだ。
加えて、笑いのほとんどが「隠すこと(ウソ)」に起因している点も見逃せない。本作でも、登場人物の大半が何かを隠している。ある者は「身分」を、ある者は「事実」を、ある者は「過去」を、ある者は「本心」を、隠している。人間は100%オープンには生きられない。コメディでありながらも、人間という生き物を赤裸々に浮かび上がらせている点はサスガである。
もちろん、ウソは隠しきれないというのが世の常。そして、ウソが新たなウソを呼ぶのも世の常。ウソというメッキが徐々に剥がれていく過程で、ある人は挫折し、ある人は自己保身に走り、ある人は自棄を起こす。三上監督は、そときのみっともなさ、コッケイさ、カッコ悪さ……そこに、手加減なく「笑い」のスパイスを加えていく。
正直、「ラヂオの時間」のときのように、腹がよじれるほど笑えるシーンはなかったし、かといって、イデオロギーの対立(「昔気質の職人 V.S. 新鋭デザイナー」のような)を描いた「みんなのいえ」のような深みも……ない。「アヒル」「幸運を呼ぶお守り」「くねくねダンス」「白塗り顏」等々、前半で登場するネタを手を返し名を変えリピートさせた点についても、あえて、くどい! と注文をつけたい。ホテルという閉鎖的な空間ゆえ、中盤から後半にかけての大胆な展開や、中だるみを打破するだけの新鮮な笑いがほしかった。
「ラヂオの時間」のように、畳みかけるような笑いを期待していたファンには、ちょっぴり消化不良な作品だろう。もちろん、評価が厳しいのは、三上作品への期待が高いがゆえであり、一般的なコメディとしてのアベレージはゆうに超えていることだけは付け加えておこう。
主演の役所広司以外でサエていた俳優を一人あげるならば、篠原涼子。見た目と違って意外と骨のある、それでいて憎めない娼婦役を好演していた。


お気に入り点数:60点/100点満点中

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