山口拓朗公式サイト

「ザ・シューター/極大射程」

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2007.6.15
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公開中の映画「ザ・シューター/極大射程」を観賞。
監督・製作:アントワーン・フークア 原作:スティーブン・ハンター 出演:マーク・ウォルバーグ、マイケル・ペーニャ、ダニー・グローバー、ケイト・マーラ 、イライアス・コティーズほか 上映時間125分 配給:2007米/UIP
勧善懲悪、リベンジアクション、孤高のマッスルヒーロー。新しさがないと言ってしまえばそれまでだが、ハリウッドの十八番分野として、ニューヒーロー誕生の期待を寄せてしまうのもたしか。果たしてその出来栄えは?


元海兵隊の敏腕スナイパー、スワガー(マーク・ウォルバーグ)。軍を退いて山奥で暮らしていた彼のところに、退役したジョンソン大佐(ダニー・グローバー)らが訪ねてきた。大統領暗殺の動きを察知したため、その阻止に協力してほしいという。スワガーはスナイパーとしての経験を生かして大統領の遊説先を事前調査し、唯一と思われる狙撃ポイントを発見。演説当日は大佐らとともに、現場の見張りについたが、1発の銃声が鳴り響くと同時に撃たれていたのは、なぜかスワガー自身だった。
主人公は孤高のスナイパー。「ゴルゴ13」に慣れ親しんだ日本の男性陣には、「スナイパー=ハードボイルド」という図式が基本(単純?)。いや、そもそも相当な手中力と沈着冷静さが求められるスナイパーに、ハードボイルドなイメージがつきまとうのは自然な流れだろう。針の穴を通す技術を身につけるには、ある種のストイックさ、そしてときには冷徹さも必要だ。
悪い連中にダマされて犯人に仕立て上げられたスワガーが、追跡の手を逃れながら復讐の機会を狙うというストーリーは——やり尽くされているとはいえ——OK。スワガーの生い立ちなどは特別描かれていないが、戦場で鍛えられた屈強な精神力には好感がもてる。妙に世間ずれしていない点や人間味を感じさせる点も含めて。
原作は2000年に“このミステリーがすごい!”海外部門で第1位に選ばれたベストセラー。ヒーローもののアクションストーリーである以上、原作は、よほどスリラーとして優れているか、ディテールのリアリティに優れているかのどちらかなのだろう。
その片りんは、ストーリーの背景に、自由や法律を隠れ蓑に私欲をむさぼる黒幕を据えている点や、セルフメイドで胸の銃痕を応急処置したり、本格的な武器を製造したりするスワガーのサバイバルノウハウなどにちりばめられているはいる。がしかし、映画として見たときに、どことなくシークエンスにつながりの悪さを感じる。スピード感がないわけではないが、ところどころに瘤(こぶ)がある感じ。
その最たる理由は、戦闘シーンの盛り込み方にあると思う。本作では、スワガーと敵の戦闘が大きく3回あるが、そのいずれもが人里離れた山奥で行われている。“スナイパーvs国家権力”というアーバンかつセンセーショナルな物語にもかかわらず(FBIや上院議員が登場するシーンは都会)、火薬を大量に使い、家屋や人をぶっ飛ばすシーンだけは、いつも山奥(カントリー)なのだ。そのご都合主義的なロケーションチョイスが、物語を不自然に分断してしまっている。
加えて、スゴ腕のスナイパーに狙われているにもかかわらず、黒幕のふたりに、敵に追い詰められているという緊迫感がない。相手が復讐に命をかけている敏腕スナイパーだということを冷静に考えれば、四六時中、命をつけ狙われる恐怖に怯えていてもおかしくはないはずなのに。
しかも雪山のシーンでは、丸裸状態でスワガーに狙われているにもかかわらず、隣りの人間が狙撃されても、顔色ひとつ変えずにその場につっ立っている(どこにそんな余裕があるのでしょうか?)。そうした心理描写がいちいち甘く、リアリティをそいでいる。沈着冷静なスワガーでさえ、100%足手まといになると分かっていながら、女に復讐の協力を求めるし(笑)。ダメ押しは、マイケル・ペーニャが演じたFBI新人捜査官の存在。たしかに、すべてのFBI捜査官がキレものとは限らないだろうが、それにしても、もう少し魅力的に描くことはできなかったのだろうか……。
もちろん、この映画が、原作のディテール描写を削って、あえてアクションに徹したものだということは分かるが、であるならば、“権力者の腐敗”というメッセージは邪魔くさいことこの上ないし、せっかくタイトルが「ザ・シューター」なのだから、見せ場は、火薬満載の戦闘シーンではなく、スリラーとして手に汗握る狙撃にこだわってほしかった。
そういう意味では、「ザ・シューター/極大射程」は、文学作品が必ずしも映画で成功するわけではないというジンクスを、首尾よく備えてしまった作品であり、 “合衆国vs孤高の狙撃手”という謳い文句から期待されるクレバーかつスリリングなかけ引きは、ほどほどにしか描かれてはいない。
ただ、主人公スワガーの人間味あふれるハードボイルドぶりや、青臭いまでの正義感、隆々の筋肉に象徴されるタフネスさ、銃を構えさせたときの“いかにも”な雰囲気は、十分観賞に堪えうるし(愛犬の死を知らされたときはもっと悲しみ、そして怒ってもらいたかったけど……)、ヒーローキャラクターとしての立ち居ふるまいはなかなかのもの。もう少し違ったカタチで、改めて彼の活躍ぶりを見てみたいという気はする。

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