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「タクシデルミア ある剥製師の遺言」

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2007.12.24
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来年2月に公開される「タクシデルミア ある剥製師の遺言」の試写。
監督:ジョルジ・パルフィ 脚本:ラットケイ・ソフィア、ジョルジ・パルフィ 撮影監督:ポルハノク・ゲルゲイ 美術:アスダロシュ・オドリエン 出演:チャバ・ツェネ、ゲルゲイ・トローチャーニ、マルク・ビシュショフ、アデール・シュタンツェル、イシュトバーン・ジュリツァほか 上映時間:91分。 配給:2006ハンガリー・オーストリア・フランス/エスパース・サロウ
ジョルジ・パルフィ監督の前作「ハックル」は、50以上の映画祭で上映され、約20の賞を受賞した作品。今回の作品が長編映画2作目となる。
戦時中、上司の中尉に奴隷のように扱われる下級兵士の妄想癖と性癖を中心に描いた第一部の「祖父時代」。その祖父の遺伝子を受け継ぐのは、彼と性交した中尉の妻が産み落とした子供だ。彼は共産主義下のハンガリーで、大食い競技の選手として食いまくりの人生を送り、やがて同じ大食い競技者の女性と結婚する。これが第2部の「父時代」。父はイスから動けないほど醜く太ってしまい、歪んだ心だけに支配される哀れな老体となる。そんな父の息子の剥製師(タクシデルミア)の人生を描いたのが第3部の「子時代」。父にも他人にも愛されぬまますごす彼は、猫に食い殺された父の死をきっかけに、ある決意をするのだった……。


悪趣味なカルト映画か、究極の芸術作品か。いずれにせよ、そのインパクトは相当なもの。脳にガツンと一発くらわされること間違いなしの超問題作である。
潔癖性、貧血気味の方、気の弱い方、その他、血やゲロや性器や内臓等の生々しい描写に耐えられない方には、100%オススメできない作品である。
ただし、いたずらにグロテスクをフィーチャーしているわけではないことは、この作品の観賞に堪えられる方の大半の意見ではないだろうか?
親子三代の物語は、人間の肉体と精神とDNAをモチーフにした斬新なコラージュであり、全編を通じて、人間の欲望に対する嫌らしいほどの洞察と、社会や権力やモラルに対する鋭い風刺と、映像倫理に対する批判と挑戦が見て取れる。
一方で、おぞましいシーンでも、その映像はそこはかとなく美しい感性に満ちている。それでいて、決して手ぬるくはない。ましてやサービス精神の類はいっさいない。もちろん容赦も。
そして、ふと振り返ると、ブツ切れだった三世代の物語が、連綿と続く性(サガ)によって数珠つなぎになっていることにア然とさせられる。
ひとつひとつの“衝撃的”あるいは“笑劇的”なシーンのとらえ方は、客自身にゆだねられている。答えはないし、あってはならない。アバンギャルドでシュールでラディカルでシニカルでノイジーでデガダンスでアーティスティック。それらの薬味を極上のブラックユーモアで煮込んだものが、本作「タクシデルミア ある剥製師の遺言」である。
まるでムナクソ悪いおとぎ話のようだ。悪夢から覚めたときに、即座に現実に戻るもよし、悪夢に引きずられるもよし、何らかのインスピレーションを受け取るもよし。この映画はひとつのストレスである。ゆえに、その対処の方法も人それぞれだ。克服する人もいれば、押しつぶされる人もいるだろう。
賛否両論は間違いないものの、この作品は、クリエイティブな思考をもつ人たちに、多くの刺激と興奮を与えるとみた。とくに第三章のクライマックスは、グロとか不快とかいう問題ではなく、執着の極地にある哲学的な所産について考えさせらる重要シーン。その解釈をめぐっては、白熱した議論が巻き起こるだろう。
どうオススメしていいのかわからない。
あえていうならば、このレビューを読んでピンとこない人は絶対に見るべきではないだろう。
「タクシデルミア ある剥製師の遺言」、忘れがたく、そして、よくも悪くも時代の殻を破る1本である。

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