「ウォーター・ホース」
2008.1.31
2月1日より公開される「
監督:ジェイ・ラッセル 原作:ディック・キング=スミス 脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス 出演:アレックス・エテル、エミリー・ワトソン、ベン・チャプリン、デヴィッド・モリッシー、ブライアン・コックスほか 上映時間 : 112分 配給:2007米/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
父親が徴兵されて以来、寂しい思いをしていた少年アンガスは、ある日、ネス湖のほとりで青く光る不思議な卵を見つけ、こっそりと家に持ち帰る。卵から生まれたのは、スコットランドに伝わる伝説の海獣“ウォーター・ホース”だった。アンガスは大きくなったウォーター・ホースをネス湖に放しにいくが……。
注:内容にやや言及しています。
少年アンガスと伝説の海獣“ウォーター・ホース”の交流を描いた物語だ。
卵から生まれたウォーター・ホースは、卵の拾い主であるアンガスのことを母親のように慕う。一方のアンガスも、ウォーター・ホースにペット以上の特別な感情を抱く。ウォーター・ホースは、食欲おう盛で、いたずら好き。子供らしい仕草や表情がとにかく愛らしい。
寂しい思いをしていたアンガスの心が、ウォーター・ホースとの交流を通じて、少しずつ癒され、表情にはしだいに笑顔が戻る。いつの時代でも、子供と動物の夾雑物のない交流には少なからぬ教えがある。以心伝心。言葉を越える愛の存在……。
紆余曲折の末、アンガスとウォーター・ホースが別れを迎えるクライマックスでは、胸を締めつけるような寂しさが、ふたりの表情や声、態度から伝わってくる。未来あるアンガスとウォーター・ホースにとっては、避けては通れない自立の瞬間でもあり、ジンとくるシーンだ。
一方、本作にはマイナス点も少なくない。ウォーター・ホースを、いわゆる“ネッシー”になぞらえる設定に、話題作り以外の意図が感じられないこともさることながら、そんなネッシーを、邪悪なモンスターと決めてかかる大人たちの描き方もステレオタイプ。また、アンガスの母をめぐる三角関係は、できの悪いラブロマンスそのものであり、砲弾が飛び交う終盤のスペクタクルな展開は、あまりに乱暴で深みに欠ける……。
ただ、おもしろいのは(と言っていいのか分からないが)、そうした周辺エピソードのいただけなさが、逆に、アンガスとウォーター・ホースの絆を際立たせている点だろう。ウォーター・ホースの命を救うべく、アンガスが勇気をふりしぼるくだりは美しく、最後に父親不在の真実をみずからの口で確認するアンガスからは、人間的な成長が見受けられる。作り事めいた背景のなかに、ひとつだけ真実が“凛”と存在しているようなイメージが、この映画にはある。
とはいえ、全体的に野暮ったい演出の方向性も手伝って、この作品に対する評価はどうしても厳しくなる。ムダなサブストーリーを削り落とし、なおかつターゲットとなる客層の年齢をもう少し下げたほうが(小学生でも楽しめるくらいまで)、作品の魅力はより引き出されたであろう。少なくとも、このテーマを見せるのに、“ネッシー”の逸話を客寄せに使う必要などまったくないように思う。
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