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「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」

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2008.2.13
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公開中の「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」を鑑賞。
監督:ティム・バートン、製作総指揮:パトリック・マコーミック、製作・脚本:ジョン・ローガン 出演:ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アラン・リックマンほか 上映時間:117分 R-15指定 配給:2007米/ワーナー
舞台は19世紀のロンドン。長いあいだ無実の罪で服役していた男が、出所後に、女主人がパイ屋を営む店の2階を間借りして理髪店を開く。だが、彼の本当の目的は、自分を陥れて妻子を奪った者を復讐することであった……。


ブロードウェイの傑作ミュージカルを原作にしたミュージカル映画だ。名作「シザーハンズ」(1990年)以来、幾度となくタッグを組んだティム・バートンとジョニー・デップ。彼らの作品とあれば、ハリウッドのメインストリームをいくドラマなど(いい意味で)期待できない。彼らの描く世界はいつだって、ブラックユーモアにあふれたおとぎ話のような世界だから。
その期待は(これまたいい意味で)裏切られることはない。本作で取り上げられている題材は、救いようのない悲劇である。なおかつ、中盤以降はスラッシャー&ホラー要素もたっぷりと盛り込まれ、いかにも彼ららしい倒錯めいた異質な世界が表現されていく。
決して面白いストーリーではない。この物語をひと言で言えば、変化球なしの復讐劇だ。数年ぶりに街に戻って来た理髪師は、かつて妻と子供を自分から奪った悪徳判事に深い恨みを抱いている。そして、その恨みを晴らすことのみが、彼の人生の主目的になっている。最初から最後まで主人公の気持ちに変化はない。つまり、この物語は、“彼の気持ちがどう変わっていくか”ではなく、“彼がどう復讐を成し遂げるか”に焦点を絞り込んでいるのだ。
そうしたなか、ミュージカルという手法が効果を挙げている。通常、ミュージカルの歌詞とは、その登場人物の気持ちを表すものである。もしこの作品がミュージカルの形態を取っていなければ、主人公の理髪師は、最初から最後まで気持ちを隠し続ける寡黙な男でしかなく、それこそ映画として成立し得ない。
ところがミュージカルの形態を取った本作では、そんな寡黙な、心の底で復讐心をメラメラと燃やす理髪師の気持ちが、随時、歌として表現される。バタバタと人が死ぬ乱暴な展開が許せるのも、主人公の“本来見えるはずのない心”が、歌を通じて伝わってくるからにほかならない。そういう意味では、「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」は、まさしくミュージカルという手法そのものが生きるべくして生きた作品といえる。
歌うジョニー・デップは、やや食傷気味な彼のエキセントリックな役柄を補完するに十分だし、繁盛するパイ屋の裏に隠された秘密は、いかにもティム・バートンが得意とする世界である。ただし、主人公に感情移入するような作品ではないだけに、結局は、彼らが織りなす奇矯な世界観と、随所にちりばめられたブラックユーモアを楽しめるかどうかで、この作品に対する評価は変わるだろう。
ただし、彩度を落とした絵画的なモノクローム調の映像のなか、銀色に輝くカミソリと、したたるビロードのような質感の血、それらは圧倒的に美しい。

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