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「バンテージ・ポイント」

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2008.3.27
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公開中の「バンテージ・ポイント」を鑑賞。
監督:ピート・トラビス 出演:デニス・クエイド、マシュー・フォックス、フォレスト・ウィテカー、ウィリアム・ハート、シガーニー・ウィーバー、エドゥアルド・ノリエガほか 上映時間:90分 配給:2008米/ソニー
テロ撲滅の国際サミットのため訪れたスペイン・サラマンカの広場で、演説を始めようとしたアメリカ大統領が、何者かに狙撃される。パニックに陥った演壇では、さらに、大きな爆発が起こる。シークレット・サービスのバーンズは、生放送中のテレビ中継車に乗り込み、撮影された映像をすばやくチェック。バーンズはモニターに映っていたあるモノを見逃さなかった……。


ひとつの事件を、現場に居合わせた8人の視点から見つめた作品。狙撃事件にまつわる一連のエピソード、そこに要した時間は1時間に満たない(30分強くらいかも)。あっという間の事件勃発、そして、あっという間の事件決着である。ふつう、これほど短い時間の出来事を映画にしようとは思わないだろう。
ところが、短い時間の出来事でも、そこに多角的視点をもたせることで、映画として十分に成立することを、この作品は教えてくれる。しかも、“大統領狙撃事件”というセンセーショナルなモチーフが、スクリーンに圧倒的なスピードとスリルをプラス。激しいカメラワークの効果もあり、90分の上映時間は、多くの人にとってあっという間のノンストップ・ジェットコースターだろう。
ただし、この8つの視点は、視点によって“物事の見え方が違う”という類のものではなく、8つの視点を並列に並べているにすぎない。つまり、この映画における多角的視点は、“深さ”ではなく、“広がり”である。視点が変わるたびに、事件の真相が見えてくるのは、多角的視点が“広がり”であることの証左だ。そういう意味では、この作品における多角的視点は、事件の真相をつまびらかにする装置、という以上の意味を持たず、そこに物足りなさを感じる人もいるだろう。
多角的視点をどう活かすかは、製作者の意図によりけりだが、「1→2→3……8」と視点を増やしていくに連れ、逆に、真実をぼかしていくという手もあったように思う(あえて犯人も特定せずに)。視点が増えるに連れて不透明になる真相――その不可解さと混乱は、見る側の好奇心と推理力を一段と刺激するだろうし、少なくとも、順番に(しかも都合よく)ネタバレしていく本作よりも、“映画側に出し惜しみされている感”は軽減するはずだ。いずれにせよ、せっかくの多角的視点に、“広がり”という物理的意味合いしかもたせないのは、実にもったいないことである。
とはいえ、そうした“広がり”だけでも、十分に客を満足させてしまえるところが、ハリウッドならではの力量だろう。決して深い感慨や感動が残る作品ではないし、特筆すべき社会的メッセージや哲学的な示唆がある作品でもない。でも、スクリーンを見つめる90分間は、ドキドキとハラハラの連続で、その世界にどっぷりと浸らせてくれる。エンターテインメント作品としては文句なしの及第点だろう。

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