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映画批評「ミラクル7号」

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2008.7.5 映画批評
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公開中の「ミラクル7号 」を鑑賞。
監督・製作:チャウ・シンチー 脚本:チャウ・シンチー、ビンセント・コク、ツァン・カンチョンほか 出演:チャウ・シンチー、シュー・チャオ、キティ・チャン、リー・ションチン、フォン・ミンハンほか 上映時間:88分 配給:2008中/ソニー
貧乏生活を送るティーは、男手ひとつで小学生の息子のディッキーを育てている。ある日、ゴミ捨て場で息子に合うくつを探していたティーは、緑色をしたゴムボールのような謎の物体を発見し、家に持ち帰るが……。


「少林サッカー」や「カンフーハッスル」でおなじみのチャウ・シンチー。キャラクターの立ちっぷりと、細かい笑い、それにユニークな映像感覚で、観客から絶え間なく笑いを引き出すこの気鋭監督の新作は、これまでの作風とは一転、父と子の愛情にピントを合わせ、なおかつ謎の宇宙生命体との交流をも盛り込んだ異色ファンタジーだ。
主人公親子(父子家庭)の描き方が素晴らしい。決して特別でないごくふつうの親子関係。親のエゴもあれば、子供の反抗もある。破けた制服のこと、欲しいおもちゃのこと、テストの成績のこと……、ささいなことでの言い合いも多いが、心の底では相手を慕いきっている。そんな気取らない父と子の関係がすがすがしい。
二畳程度の狭い部屋で肩を寄せ合いながら生活する彼らにしか分からない肌感覚のようなものが、ふたりの信頼のゆるぎない屋台骨だ。貧乏はしているが、決してユーモアと前向きさは忘れない。エピソードはおしなべてありふれたものばかりだが、それでも胸がジンとくるのは、彼らの生き方に共感できる人間くささがあるからだろう。
そんなふたりの生活に突如飛び込んで来る謎の宇宙生命体「ミラクル7号」は、その意外なほど役に立たないキャラを打ち出しながらも(笑)、猛烈にかわいい仕草と表情と動きで、観客を魅了する。この愛らしい生物に子供がからめば、生物の枠組みを超えた愛情が芽生えるのは必然。しかも、ミラクル7号がディッキーに助けの手を差し伸べるのではなく、このか弱い生き物を守ろうと、ディッキー自身が精神的に成長していく展開が魅力的だ。
ミラクル7号が、自己犠牲とも言うべき行動に出るクライマックスは、単純に“荒唐無稽”と切り捨てるには忍びない。なぜなら、ミラクル7号が取った行動の動機を推察したとき、そこに、「すみか」や「生物学的な分類」、「言葉」といった壁を越えた愛が凛と存在するのを感じるからだ。
「少林サッカー」や「カンフーハッスル」のような爆笑系を期待すると、「あれ?」と肩すかしをくらうかもしれないが、個人的には、シリアスなテーマと独自のユーモア、それに、奇想天外なファンタジーの融合を図った本作「ミラクル7号」は、チャウ・シンチーの新境地として評価したい。小学校の低学年でも十分に理解できてしまうストーリーに食い足らなさを感じないわけではないが、それを差し引いても見てソンはない作品だ。
子役のシュー・チャオが喜怒哀楽たっぷりに少年ディッキーを演じているほか(本当は女の子だというからビックリ!)、チャウ・シンチーの達者な演技も健在。もちろん、チャウ・シンチー作品らしく、本作でもマンガ並にキャラの立った人物がそこかしこに配置されている。テイストは異色ながら、スクリーンのどこを切り取っても、結局はチャウ・シンチー作品以外の何ものでもないという——そこに大きな安心感があるのも事実だ。

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