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映画批評「バイオハザード ディジェネレーション」

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2008.9.17 映画批評
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10月18日より公開される「バイオハザード ディジェネレーション」。
監督:神谷誠 製作総指揮:辻本春弘 脚本:菅正太郎 音楽:高橋哲也 声優:ポール・メルスィエ、アリソン・コート、ローラ・ベイリー、スティーブ・ブラム、ミッシェル・ラフほか 上映時間:98分 配給:2008日/ソニー
バイオテロや薬害の被害者を救うべくNGOに所属するクレア。ある日、空港にいた彼女の目の前にゾンビが出現。空港内がパニックになったその瞬間、こんどは1台の飛行機が空港の建物に突入。機内からもゾンビ化した乗員や乗客が降りてきて……。


1996年に発売されて以来、大ヒットを飛ばしているゲーム「バイオハザード」シリーズ。ゲームの枠を越え、ミラ・ジョヴォヴィッチを主演に据えてハリウッドで実写映画が撮られるなど(こちらもシリーズ化)、飛び火的な広がりをみせている人気作品だ。
おなじみのウイルスを用いたテロ事件を発端に、テロ首謀者の思惑、ゾンビvs特殊部隊の壮絶バトル、黒幕の存在……等々を絡めながら進む物語は、ゲームとのつながりにも配慮した企画モノ志向。ホラーやアクション、サスペンス、ラブロマンスと、盛り込まれた要素も、アミューズメントムービーらしい百花繚乱ぶりだ。
ところが、展開や演出の切れ味がおしなべて鈍い。空港と某所の2カ所に見どころを分断したうえ、似たようなヒロインをふたり同時に登場させるなど、物語に対する集中力&キャラクターに対する共感を削ぐウィークポイントが多い。しかも、登場人物たちのプライベート上の関係が極めてあいまいで中途半端。物語の柱は整理されているが、肝心の中身が生煮えだ。
一方、本作の目玉であるフルCG映像は、技術面ではトップランクに位置づけられるものなのだろう。時折登場する、実写と見まがわんばかりのシーンには、映像の可能性の豊かさを感じずにはいられない。モーションキャプチャーを採用した人間の細かな表情や動き、炎めらめらのド派手なアクションシーンなど、ハイレベルな実写感は、それなりに観客を楽しませ、うならせる。
ただし、実写と差異ないフルCGで映画を制作する意味を、私自身が100%の理解しているかといえば、残念ながら、答えはNO。実写で表現できない部分をCGでカバーする意味は十分に理解できても、だ。
たしかに、あまりにリアルな映像に、CGであることを忘れる瞬間はある。だが、裏を返せば、CGであることを認めざるを得ないシーンも多いということだ。それは、はじめからアニメーションと分かっていて作品を観るときにはない、致命的なストレスと違和感、そしてウソくささを観客に与える。
今後、同様のフルCG作品はますます増えるのだろうが、制作者が、その目的を「実写に近づける」ことにのみに置くのであれば、このジャンルに未来はないだろう。もしフルCGで圧倒的な実写感が再現できたとしても、それはイコール、ハイクオリティな映画とはいえない。実写には実写、CGにはCGの役割があり、その領分を勘違いするとイタい作品になりかねない。
とはいえ、あえてフルCGにこだわった作品として、「バイオハザード」シリーズを選んだ判断自体は、間違いではないだろう。ゲームを原作とする作品をフルCGで再現する。そこには一応、納得できるだけのロジックがあるからだ。
しかも、本作の宣伝の仕方等々を考えると、ゲームや映画の「バイオハザード」ファンをターゲットにしたものであることは明白。狙い通りのターゲットがこの映画を見てエキサイトする、あるいはマニアックな見方を楽しむのであれば、制作者サイドとしては“御の字”なのだろう。

お気に入り点数:45点/100点満点中

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