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「アイズ」

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2008.10.24
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11月1日より公開される「アイズ」。
監督:ダヴィッド・モロー、ザヴィエ・パリュ 脚本:セバスチャン・グティエレス 出演:ジェシカ・アルバ、アレッサンドロ・ニヴォラ、パーカー・ポージー、ラデ・シェルベッジアほか、上映時間:97分 配給:2008年米/ムービーアイ
盲目のバイオリニスト、シドニー(ジェシカ・アルバ)は、角膜移植手術を受けて、その目に光を取り戻すが、視力が回復するにつれ、“自分にしか見えないモノがある”ことに気づく。シドニーにしか見えないモノの正体とは一体何なのか? シドニーは角膜提供者の身元を調べ始める……。


アジアで好評を博したという「the EYE【アイ】」(02年)のハリウッドリメイク版。オリジナル作品は未見だが、ストーリーはほぼオリジナルを忠実にトレースしているという。
角膜移植をしたことにより何かが見える——この内容から、展開はおおよそ想像がつくが、そうした展開はさておき、彼女が体験する視覚体験が実にスリリングだ。主人公の視覚体験は、スクリーンを介してそのまま観客の視覚体験となる。しかも観客は、視覚体験のみならず、BGMや効果音でも恐怖を煽り立てられるのだから、ホラー嫌いにはたまったものではないだろう。
カメラワークや間合い、映像技術、BGM、それに効果音。典型的な映像・音響演出が効果を挙げている。加えて、都会暮らしを送るバイオリニスト、シドニーの日常がスタイリッシュに描かれているため、“いかにも何か出てきそう”な設定のホラーとは一線を画すリアリティが存在する。
ジェシカ・アルバの演技も秀逸だ。光を取り戻した人生という難しい役どころながら、表情(とくに目元!)に微妙な変化をつけながら、シーンに応じた違和感のない演技を披露する。視力を取り戻したことによる困惑や、周囲の理解不足によって抱える孤独や疑心暗鬼、そしてシドニー本来のたくましさ。主人公の心の移ろいや葛藤が、自然と観客に入ってくるのは、ジェシカの演技の賜物にほかならない。
ホラー色はやや抑え目で、その分スピリチュアルなエッセンスを多分に盛り込んだ本作は、随所に伏線をちりばめた謎解きとしても、それなりに楽しめる。人の思いが脳だけでなく細胞の一つひとつにも記憶されている——、そんな“細胞記憶”というテーマから想像しうる展開に「プラスα」のひねりをもたせ、過去だけでなく、未来もを交錯させたプロットは、できれば細かい突っ込みを入れずに楽しみたいところだ。クライマックスで見られるご褒美のようなアクションシーンについても、また同様に。
“細胞記憶”が実生活に与える影響については、現実的には未検証な領域なのかもしれないが、物語のモチーフとしては効果てきめんだ。事実、他人の細胞を自分の体に取り入れる、いわゆる“移植”には、どこか道義的な意義を超越した神秘性を感じずにはいられない。
たとえば、角膜だけでなく、肝臓や腎臓や心臓……等々の臓器も同時に移植するようなことがあった場合、その人は、果たして元の人といえるのだろうか? “細胞記憶”というテーマは、そうした倫理的・哲学的好奇心をも多分に刺激する。
観客を適度に怖がらせながら、エンターテインメントとしての資質も兼ね備えた本作「アイズ」。ゾンビやジェイソンのような王道ホラーとの差別化を図るモダンモードな演出と、主人公の人間味あふれるキャラクターが、スクリーンに強い印象を残す。ホラー&スリラーファンのみならず、幅広い客層が楽しめる作品だろう。

お気に入り点数:65点/100点満点中

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