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「バンク・ジョブ」

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2008.11.20
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11月22日より公開される「バンク・ジョブ」。
監督:ロジャー・ドナルドソン 脚本:ディック・クレメント、イアン・ラ・フレネ 出演:ジェイソン・ステイサム、サフロン・バロウズ、スティーブン・キャンベル・ムーア、ダニエル・メイズほか 上映時間:110分・PG-12 配給:2008英/ムービーアイ
中古車販売店を営むテリー(ジェイソン・ステイサム)を中心とした一味が、ロンドンのベイカー街にある銀行の貸し金庫破りを実行する。計画はまんまと成功するが、盗んだもののなかに、思わぬブツが含まれていた……。政界や王室、マフィアをも揺るがした犯行のゆくえはいかに!?


1971年にイギリスで実際に起きた事件をモチーフにした犯罪スリラーだ。
英国王女にまつわる衝撃的な写真をはじめ、とあるマフィアの手帳、とある政治家のプライベート写真……etc。社会的地位や権力を手にする人たちの“秘密”を盗んだことにより、犯人グループは、思いもよらず、多方面から命を付け狙われることになる。
この映画のおもしろさは、金よりも大切な“秘密”を盗まれた人々の動揺にある。盗まれた自分の“秘密”が表沙汰にならないかとヤキモキする姿は滑稽そのもの。一方で、その“秘密”をどう切り札に使うべきか思案に暮れる犯人グループとの駆け引きも見どころだ。
70年代&ハードボイルド気分を演出した映像も手伝ってか、物語は比較的シリアスなトーンで進むが、次々と浮かび上がる権力者やお偉い方たちの恥部はモロにコメディだ。いや、いっそのことコメディ映画にしてしまう手もあったかもしれない、この実話は。
被害者の多くは、“金などくれてやるから秘密を返せ!”という自己保身全開のスタンス。71年に起きた実際の事件でも、貸し金庫破りに遭った被害者のうち100人以上が、被害内容の申請を拒否したというから、彼らが隠していた秘密の重要度は推して知るべし、だ。
事件解決に至るまでの展開は今ひとつスリルに欠け、主要キャラクターにもあまり魅力が感じられないが、本作「バンク・ジョブ」は、盗難物の特異さが生み出した波紋こそが、最大のおもしろさ&見どころにつき、細かい欠点には雅量を示すべきかもしれない。
とはいえ、人生がパーになるかもしれないと脅える被害者の、ヒリヒリするような心理については、より鋭く内角をえぐる描写がほしかった。扱ったテーマ(実話)が興味深いだけに、類型的な犯罪スリラーの枠に収まらない——場合によっては、おもいきり反権力的な視点から——したたかで皮肉たっぷりな人間観察眼を見せつけてもらいたかった。

お気に入り点数:60点/100点満点中

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