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「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」

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2009.4.6
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公開中の「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」。
監督:ジョン・ポール 脚本:ガスティン・ナッシュ 出演:アントン・イェルチャン、ホープ・デイヴィス、カット・デニングス、ロバート・ダウニーJr.ほか 上映時間:97分 配給:2008米/ゴールドラッシュ・ピクチャーズ、ワイズポリシー
17歳のチャーリー(アントン・イェルチャン)は、成績優秀にもかかわらず、有名私立高校の退学歴が何度もある問題児。チャーリーは頭のよさを活かして、校内でつい違法ビジネスをやってしまうのだ。いよいよ地元の公立高校に行かざるを得ないはめになるが、そこでもあるビジネスを思いつき……。


頭脳明晰な主人公チャーリーのお騒がせ行動を追いかけた、一風変わった趣の学園ムービーだ。
本作は青春映画というよりは思春期映画と言うべきだろう。印象的なセリフが冒頭にある。「高校では人気だけが重要なの?」と訊く母親に対して、チャーリーは平然と「ほかに何か大事のことがある?」と答えるのだ。思春期の若者にとって、頭脳が明晰でも、運動神経が抜群でも、とびきりのイケメンでも、何かが足りないと感じることがある。その何かが「人気」であるケースは珍しくないのだろう。
この時期、他者から人気を得る(認められる)ことは、自己の肯定にほかならない。事実、チャーリーは自分がステージ上に立ち、仲間から拍手喝采を浴びる場面をよく妄想する。まるでロックスターにでもなったような自分の姿を。17歳という多感な時期に加え、家庭環境の複雑さも手伝って、彼の妄想は肥大化し、いよいよ現実世界との境をなくしていく。
ビジネスで注目を集めたチャーリーが、いつしか学生たちの「悩み相談」を受けるようになるというくだりが、意外性に富んでいておもしろい。ひとりで耐え忍ぶのが美徳とされがちな日本人には、「こんなヤツはいないよ!」と一蹴される可能性があるが、心理学先進国にしてカウンセリング先進国でもあるアメリカでは、十分にありうる描写なのだろう。男子トイレの隣り合わせた個室と個室で相談する様子は、まるで教会の告解室のようだ。
それにしても、シニカルとブラックユーモアが満載の作品だ。薬でハイになる学生連中や、物事に動じない(悪く言えば無関心な)チャーリーの母親、校内での暴力ビデオDVDの販売、主治医をだまくらかしての薬調達、それに赤裸々な学生たちの相談内容……。悪びれることなく盛り込まれた痛快エピソードの数々は、本人たちが必死なだけに、なおさら観客の笑いのツボをくすぐる。
惜しまれるのは、チャーリーやチャーリーの恋人スーザンにまつわる親子の問題や、相談を持ちかけた生徒たち一人ひとりの問題が、思った以上に掘り下げられていないない点だ。問題は見えるのに、その問題が痛みとして伝わってこない。ティーンエイジャーの心の揺れはとらえにくいだけに、その深層に切れ込むシリアスさがあってもよかったように思う。テーマやユーモアを引き立てる意味でも。
17歳の少年少女は、今まさに巣立とうとする小鳥だ。自分は飛べると思っているのに、現実的にはまだ羽ばたけていない。思いに現実が追いつかない。その苛立ちが劣等感や無力感の引き金となり、ときに大人への反抗心を生み出す。チャーリーの<人気者になりたい病>も、おそらくは思春期の若者がかかりやすい麻疹のようなものなのだろう。うがった見方をする大人よりも、思春期に身を置くチャーリー世代に観てもらいたい作品だ。

お気に入り点数:60点/100点満点中

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