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映画批評「消されたヘッドライン」

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2009.5.19 映画批評
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22日に公開される「消されたヘッドライン」。
監督:ケヴィン・マクドナルド 原作:ポール・アボット 脚本:マシュー・マイケル・カーナハン、トニー・ギルロイ、ビリー・レイ 出演:ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、レイチェル・マクアダムス、ヘレン・ミレンほか 上映時間:127分 配給:2009米/東宝東和
高潔なイメージの国会議員スティーヴン・コリンズ(ベン・アフレック)のもとで働く美人職員が、出勤途中に駅のホームで謎の死を遂げた。地元新聞紙の敏腕記者カル(ラッセル・クロウ)は、その前夜に起きた黒人少年殺害事件の取材をしていたが、死亡した少年の携帯電話を調べたところ、ある驚くべき事実が発覚した。果たしてふたつの事件から浮かび上がってくる真実とは……!?


謎めいたクライムサスペンスであると同時に、骨太なジャーナリズム映画でもある。カメラワークなどに、ウォーターゲート事件の真相究明に尽力した記者の奮闘を描いた名作「大統領の陰謀」(76年)へのオマージュも見受けられる。
新聞記者というのは実にドラマになりやすい。それは、ジャーナリストの「使命感」というか「本能」というか、あるいはスクープをスッパ抜こうという「野心」というか、とにかく、そうした<ブンヤ魂>が、常に緊張感をはらんでいるからだ。スクープの誘惑と記事を世に送り出す責任の重さは、決まって記者をジレンマで縛る。デッドラインまでに、どれだけ確かなウラ(言質を含む確実な証拠)を取ってこられるかが勝負。そのせめぎ合いが、とてつもないスリルを生むのだ。
本作「消されたヘッドライン」も、スリルあふれる記者の奮闘ぶりを描いた作品だ。優秀な記者であればあるほど大胆かつ粘着質な取材をするものだ。この映画でも、主人公のカルが、犯罪と紙一重の力ワザで重要な言質を取りに、いや、奪いにいく。明らかにやり過ぎなのだが、そうした強引な取材の原動力が、千載一遇の大きなヤマに命をかけずにはいられない<ブンヤ魂>にあることは自明。「優秀なジャーナリスト」であることと「(俗にいう)善人」であることは、そもそも両立し得ないのかもしれない。
一方、本作には娯楽性も多分に添加されている。事件がミステリー仕立てになっていることもそうだし、親友が事件に絡む筋立てとすることで、カルの記者心理にゆさぶりをかけた点もそう。また、取材を進めるうちにある巨大な陰謀が見えてくるスリリングな展開や、事件の真相を越えて、知られざるアメリカの真相まであぶり出すくだりも秀逸だ。批判性をも内包したサービス精神旺盛な脚本といえよう。
そのほかにも、カルと冷徹な女性編集局長との駆け引きや、カルが若手女性記者とゆっくりと育む信頼関係、カルと親友とその妻による三角関係など、骨太な記者ドラマのなかに、さまざまな人間くさいエピソードを挟み込んでいる。このあたりは、マシュー・マイケル・カーナハン(「キングダム/見えざる敵」)、トニー・ギルロイ(「ボーン」シリーズ)、ビリー・レイ(「アメリカを売った男」)という三人の手練れの脚本家がストーリー作りにたずさわった成果といえるだろう。
スター性よりも演技力に定評のあるラッセル・クロウやベン・アフレックをメインキャストに起用したことにより、スクリーンに重厚さが生まれ、物語もギュッと引き締まった。名女優ヘレン・ミレンも、カルと会社経営陣との板挟みにあいながらイライラを募らせる女性編集局長を好演。文句なしの存在感を見せつけた。若手記者を演じたレイチェル・アクアダムスの肩に力の入り過ぎない演技も好感度“大”だ。
事件の真相にまつわる伏線張りにやや丁寧さを欠いた点が残念だが、エモーショナルな<ブンヤ魂>に導かれるままに突き進んだ中盤のドライブ力を、とくに高く評価したい。社会派ネタが好きな方にオススメの秀作エンターテインメントだ。

お気に入り点数:75点/100点満点中

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