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「ハイキック・ガール!」

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2009.5.29
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30日に公開される「ハイキック・ガール!」。
監督・原作・企画:西冬彦 脚本・西冬彦、木村好克 主題歌・ステファニー 出演・武田梨奈、高橋龍輝、中達也、天野暁兒、須藤雅宏、八木明人、蒲生麻由、渡辺久江、小林由佳、井村空美、秋元才加、神尾佑、西冬彦ほか 上映時間:81分 配給:2009日/ヘキサゴン・ピクチャーズ
空手道場へ通う運動神経抜群の女子高生・圭(武田梨奈)は、型稽古ばかりやらされる毎日に少々うんざりしていた。そんなある日、格闘技や武道の達人を多数擁する武闘派集団「壊し屋」から電話を受ける。圭は自分の空手の実力を試そうとするが……。


スタントマンを起用せず、ワイヤにも頼らず、殴る“ふり”もなく、出演者同士がマジで突き(パンチ)や蹴り(キック)をあて合う。本作「ハイキック・ガール!」は、おもいきりリアルな格闘シーンを撮りたいと考えた西監督が、初志を貫徹した「1本芯の通った」というよりは「芯しか見あたらない」異色のアクションムービーだ。
マジで突きや蹴りをあて合うということで、キャストには、日本空手協会の総本部師範(中達也)をはじめ格闘技に精通した強者たちを起用。並み居る出演者の顔ぶれからして、この映画がいかに「リアルな格闘シーンありき」で作られたものかがよくわかる。
オーディションで選ばれた主演の武田梨奈(17歳)は、10歳から空手を習っているだけあって、急造の女優には真似できない「おぬし、やるな!」的な雰囲気を醸し出す。キレのある攻撃も堂に入っているが、むしろ、相手のキツい突きや蹴りをグっと耐える姿に、玄人はだしな格闘家資質を感じさせる。アクション女優として前途洋々な女子高校生を掘り出した意義は、この作品はもちろん、日本映画界にとっても小さくないだろう。
注目の格闘シーンは、「マジあて」ゆえに迫力十分なうえに、監督お気に入り(?)のシーンは、スローモーションで二度三度とリプレイするフェチぶりだ。映画的な流れやテンポを無視した“格闘シーン偏愛構成”は、マニアの域と言うよりほかなし。唯一盛り込まれたメッセージも、空手の極意「自分を護り、生き残るためのもの」という徹底ぶり。この一点集中主義的な潔さは評価すべきだろう。
とはいえ、どうみてもこの映画は、武田梨奈の、あるいは「マジあて」アクションのプロモーションビデオの域だ。よく分からない悪党グループを登場させた脚本は、子供向けの戦隊ヒーローもののほうがまだ気が利いてるかも……と思わせるレベル。また、屈強な男たちがボコボコに殴り合う総合格闘技がふつうにテレビで見られる今日び、映画というフィクションのなかで、実際に拳や蹴りをあて合う価値がどれほどのものかは、計りかねるところでもある。
限られた予算のなかで、西監督がやりたいことをやり切った本作「ハイキック・ガール!」は、三度のメシより格闘技が大好きという方や、新鋭・武田梨奈のスラっと伸びる美脚を拝まずにはいられないという方にオススメの1本。格闘技やアクションに興味もないのに、楽しげな学園ドラマと勘違いして劇場入りすると「痛打」をくらう可能性が高い。

お気に入り点数:50点/100点満点中

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