山口拓朗公式サイト

映画批評「カムイ外伝」

Pocket

2009.9.24 映画批評
movie.kamui.jpg
公開中の「カムイ外伝」。
監督:崔洋一 脚本:宮藤官九郎、崔洋一 原作:白土三平 音楽:岩代太郎 出演:松山ケンイチ、小雪、伊藤英明、小林薫、佐藤浩市、大後寿々花、イーキン・チェン、土屋アンナ、芦名星、金井勇太ほか 上映時間:120分 配給:2009日/松竹
「週刊少年サンデー」(65~67年)、「ビッグコミック」(82~87年)に連載された白土三平の長編劇画「カムイ外伝」を崔洋一監督が実写映画化。アクション・エンターテインメントの注目作だ。
剣の達人である忍者カムイ(松山ケンイチ)は、掟でがんじがらめになった世界に嫌気がさし、忍(しのび)の世界から逃げ出して「抜忍(ぬけにん)」となる。「追忍(ついにん)」の手をかわしながら逃亡を続けていたカムイは、偶然知り合った漁師の半兵衛(小林薫)の家に居候することになる。しかし実は、半兵衛の妻スガル(小雪)もカムイと同じ抜忍であった……。


抜忍として逃げ続けるカムイは孤独である。自由を求めて「忍の世界」を抜け出したものの、心が休まることがひとときたりともらない。安全にかくまってくれる身寄りもなく、命をつけ狙われることを宿命づけられた身。その猜疑の念と悲哀は想像に難くない。 
ただし、この映画が、そんなカムイの逼迫した心情を描き切っているかといえば、残念ながら答えはノーだ。理由のひとつには、冒頭を除き、「忍の世界」についての描写がほとんどないことが挙げられる。寡黙なカムイの逃亡生活から、彼の心の内を探るのは至難の業だ。カムイが「忍の世界」で何を見聞きし、そこで何を感じたのか。また、なにゆえ命を狙われるリスクを冒してまで「忍の世界」を抜け出す決意に至ったのか。その背景をある程度描き込まないことには、カムイというキャラクターの実像が見えてこない(抜忍となった説得力も得られない)。
カムイの逃亡生活を描いたドラマは、日本を代表する監督と脚本家がタッグを組んだとは思えないほどお粗末だ。カムイが半兵衛一家に心を開いていくくだりひとつをとっても、(猜疑心に覆われているはずの)カムイの気持ちの変化が性急すぎるうえに、展開そのものも紋切り型だ。せめて、序盤にカムイとスガルがくり広げる疑心暗鬼の応酬については、もう少し粘りのある演出がほしかった。
唯一の見せ場となるアクションは、決して完成度が高いとはいえないワイヤとCGが邪魔をして、失笑とツッコミを誘う滑稽なシーンも少なくない。しかし一方で、カムイが身をかがませて前のめりに疾走する姿はスピーディで迫力満点。ガチンコ勝負の剣戟(けんげき)では、なかなかのスリルと臨場感を味わわせてくれる。本物の忍者よろしくハイレベルな松山ケンイチの身体能力は、ある意味、この映画の一番の驚きといえるかもしれない。
総じて表層的で張りぼてなエピソードが災いして、内容的には食い足りなさを感じるが、今を時めく人気若手俳優が初めてトライした時代劇アクションとして見るなら、及第点をあげるべきだろうか。

お気に入り点数:50点/100点満点中

メルマガ「 銀幕をさまよう名言集!」を発行しています。ご登録はコチラから★

記事はお役に立ちましたか?

以下のソーシャルボタンで共有してもらえると嬉しいです。

 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
Pocket