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映画批評「私の中のあなた」

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2009.10.10 映画批評
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公開中の「私の中のあなた」。
監督・脚本:ニック・カサヴェテス 原作:ジョディ・ピコー 脚本:ジェレミー・レヴェン 出演:キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァほか 上映時間:110分 配給:2009米/ギャガ
11歳のアナ(アゲビイル・グレスリン)は、小児白血病を患う姉のケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)のドナーとなるべく両親が遺伝子操作でもうけた子供であった。母親(キャメロン・ディアス)は、ケイトのためにアナが協力するのは当然だと思っていたが、ある日、アナが両親を相手に訴訟を起こした。「もうケイトのために手術を受けるのはイヤ」と。母はアナの行動に憤慨するが……。


11歳の子供にドナーになることを拒否する権利はあるのか? いや、そもそも遺伝子を操作し、ドナー目的で子供を作ることは倫理的・道徳的に許されるのか? わが子に訴訟を起こされた両親の気持ちは? はたまた一連のてん末を静観するケイトの本心は? 家族のなかにあっても、抱く感情は、立場によってさまざま。同様に、この映画が提起する問題も多岐にわたる。いずれも簡単に答えを出せるものではない。
シリアスになりすぎないよう随所にユーモアを添加しながら、映画は、決して暗いことばかりではない家族の日常を描いていく。アナの「ドナー降板宣言」を分水線に、家族に亀裂らしきものも生じるが、その水面下には、しっかりと家族の「絆」と「愛」を張り巡らせる。クライマックスで明かされる意外な真実は、そうした「絆」と「愛」の輪郭を際立たせ、観客の心を容赦なく揺さぶる。
ニック・カサヴェテス監督は、「死」というフィルターを通して、「生」の価値を鮮やかに浮き上がらせた。感情に訴えかけるシーンでは、エモーショナルな音楽とスローモンションを多用するが、そうしたベタな演出が嫌らしさを感じさせないところに、この監督のセンスがある。終盤、家族の「絆」と「愛」を、ほとんど会話のないビーチのワンシーンで表現した点も高く評価したい。もちろん、一筋縄ではいかない臓器提供の問題に一石を投じている点も。
初めての母親役をそつなくこなしたキャメロン・ディアスや、アナを演じた天才子役のアゲビイル・グレスリンの好演が光る。だが、それ以上の頑張りを見せたのが、小児白血病を患うケイトを演じるために髪や眉を剃って役にのぞんだソフィア・ヴァジリーヴァだ。入魂の役作りである。
若くして死と向き合うケイトの姿は、正直なところ、正視するに忍びない。心から家族を愛し、小児白血病という現実を受け入れるケイトの心の、なんと強く、清らかで、優しいことよ。その場にいた多くの観客がそうであったように、結局私自身も、熱くなる目頭からの落涙を避けることはできなかった。終盤30分のBGMは、客席に響くすすり泣きである。ハンカチ必携。涙によるデトックス効果は今年No.1だろう。

お気に入り点数:80点/100点満点中

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