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映画批評「アサルトガールズ」

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2009.11.16 映画批評
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12月19日公開の「アサルトガールズ」。
監督・脚本:押井守 製作:原田健 撮影:湯浅弘章、佐藤敦紀 音楽:川井憲次 美術:黒川通利 衣装デザイン:竹田団吾(劇団☆新感線) 出演:黒木メイサ、菊地凛子、佐伯日菜子、藤木義勝 声優・ナレーター:イアン・ムーア 上映時間:70分 配給:2009日/東京テアトル
「イノセンス」(2004年)、「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」(2008年)などで知られる鬼才、押井守監督が、オンラインゲームの仮想空間に広がる大砂漠を舞台に、3人の美女ハンターとどう猛なモンスターの対決を活写。70分間、独創性豊かな押井ワールドが堪能できる実写SFアクション・ファンタジーだ。


凶暴なモンスターが手ぐすね引いて待っているオンラインゲームの仮想空間<アヴァロン(f)>。そのなかの無法地帯「デザート22」にやって来たのは、「狩り」という名のゲームを楽しむ3人のプレイヤー。特殊戦闘機を操る狙撃手グレイ(黒木メイサ)と、カラスを彷佛とさせる黒衣のルシファ(菊池凛子)、それにオートマチックライフルを装備する女騎士カーネル(佐伯日菜子)だ。伝説の巨大モンスター<マダラスナクジラ>を倒すために、彼女たちは力を合わせることにするが……。
仮想空間で「狩り」をするという突飛な舞台設定、美女3人のフェティシズムあふれるコスチュームや武器、VFXを駆使したモンスターや戦闘機、荒涼とした砂漠の乾いた空気感、激しく飛び交う銃弾&ミサイルなど、全編にわたって多彩な見どころを用意している。
「現実と虚構」をテーマにした映画は少なくないが、荒唐無稽ともいえる仮想空間を実写で表現した手腕はお見事というよりほかない。一歩間違えればC級ダメ映画リスト行き必至というリスクをはねのけて、よくぞここまで鑑賞に堪える作品を作り上げたものだ。
三者三様の個性をもつ美女ハンターは、この映画の生命線だ。とりわけグレイを演じた黒木メイサは、その抜群のスタイルと、竹田団吾(劇団☆新感線)が担当したフェチ度の高い衣装デザインとが相まって、多くの観客(とくに男性客)を魅了するであろう。セクシーな立ち姿はもちろん、武器を手に取る所作などにも色気が漂う。
唯一の男性プレイヤーとなる藤木義勝扮するイェーガーも、なかなかどうして魅力的なキャラクターだ。重量のある対戦車砲をかついで砂漠を闊歩する野性味あふれる姿は、この映画に奥行きと広がりを与える。美女ハンターの引き立て役としての貢献度も計り知れない。
「二宮金次郎」や「カタツムリ」を持ち出した“?”なエピソードでは、観客を巧みに煙に巻くが、そこに何らかの示唆やメッセージを読み取るのも一興だ。あるいはそれは押井監督が世界に発信することを想定して忍ばせた超極秘アイコンなのかもしれないが。
気鋭の映像作家らしいクリエイティビティを随所にちりばめて、押井ファンの期待に応える「アサルトガールズ」。ストーリーは貧弱で、お世辞にも万人が楽しめるエンターテインメント作品とは言えないが、VFXに心血を注いだビジュアルと丁寧な演出で、唯一無二の世界観を構築している。


お気に入り点数:65点/100点満点中

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