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映画批評「ルドandクルシ」

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2010.2.23 映画批評
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公開中の「ルドandクルシ」。
監督・脚本:カルロス・キュアロン 製作:アルフォンソ・キュアロン、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、ギレルモ・デル・トロ 出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、ギレルモ・フランチェラほか 上映時間:101分・PG12 配給:2008メキシコ/東北新社
アルフォンソ・キュアロン監督作品「天国の口、終りの楽園。」(2001年)といえば、熱気と寂寥(せきりょう)が錯綜する青春ロードムービーの傑作。本作「ルドandクルシ」は、「天国の~」で脚本を担当したカルロス・キュアロン(アルフォンソ・キュアロンの弟)が初めてメガホンを取った、喜怒哀楽を濃縮パックしたヒューマンドラマ。主演には「天国の~」のガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナを再び起用した。


ちなみに本作は、アルフォンソ・キュアロン(「天国の口、終りの楽園。」「トゥモロー・ワールド」)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(「21g」「バベル」)、ギレルモ・デル・トロ(「ヘルボーイ」「パンズ・ラビリンス」)という、メキシコ映画界をけん引する3人が設立した製作会社「チャ・チャ・チャ」の第1弾作品でもある。
バナナ園で働いていた異父兄弟の兄ベト(ディエゴ・ルナ)と弟タト(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、ある日、たまたま草サッカーを観戦していたサッカーエージェント、バトゥータ(ギレルモ・フランチェラ)にその能力を高く評価される。しかし、バトゥータがスカウトできるのはどちらかひとりだという。ふたりはPKで決着を付けようとするが、兄ベトの「右に蹴れよ」の耳打ちの意味を弟タトは取り違えて……。
凹凸兄弟のサクセスストーリーとその後の凋落ぶりを描いた「“天国”経由“地獄”行き映画」だ。思ったことは何でも口にする兄ベトと弟タトは、口を開けばケンカばかりしている。サッカー選手としてのタイプは正反対で、ベトが<ルド(タフな乱暴者)>と呼ばれるゴールキーパーで、タトが<クルシ(ダサい自惚れ屋)>と呼ばれる点取り屋。スター選手に登りつめたあとでさえ、ふたりは「どっちが母親の豪邸を建てるか」で言い争うほど“火と油”の関係だ。しかし一方で「母親思い」「計画性ゼロ」「やることがアホ」……等々の共通点も多く、なんだかんだで慕い合ってもいる。
サッカー選手としての描写が控えめなのは、兄弟の「日常としての人生」と、そこに垣間見られる「兄弟の絆」を描きたかったからだろう。事実、スター選手のタトは交際していた国民的美女と○○し……、また、ゴールキーパーとして無失点記録を続けるベトはギャンブルで○○し……と、映画は、さもそれを楽しむかのように、ふたりの人生の凋落を至近距離から描く。稚拙なことばかりを次々とやらかすふたりだが、当の本人たちは大まじめ(というかKY)。そこがこの兄弟の憎めないところ。その飾らない人柄にかえって魅了される観客も少なくないだろう。
どん底のふたりが起死回生を狙って挑んだとあるギャンブルでは、裏で糸を引く黒い影の存在も手伝って、手に汗握る駆け引きがくり広げられる。そして、何の因縁か再び訪れたPK勝負。勝利の女神がどちらにほほ笑むかは、ぜひとも劇場でご確認いただきたい。勝敗が決した直後にルドとクルシが交わすアイコンタクトのおかしさといったらない。やはりこのコンビは鉄板だ。
ユーモアあふれるドラマをテンポよく展開する一方で、その背景に、急速に広がる所得格差や加熱するサッカー人気など、メキシコならではのお国柄や社会状勢を盛り込んでいる点も、製作クレジットに自国の敏腕監督が名を連ねる本作「ルドandクルシ」の“らしさ”といえよう。いずれにせよ、自由奔放に生きすぎのキライがあるベト&タトの兄弟からこぼれ落ちてくる、えも言われぬ“おかしさ”。そこを楽しめるか楽しめないかで、この映画に対する評価は決まるだろう。

お気に入り点数:70点/100点満点中

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