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映画批評「シェルター」

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2010.4.13 映画批評
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公開中の「シェルター」。
監督:マンス・マーリンド、ビョルン・ステイン 脚本:マイケル・クーニー 出演:ジュリアン・ムーア、ジョナサン・リス・マイヤーズ、ジェフリー・デマン、フランセス・コンロイ、ネイト・コードリー、ブルックリン・プルーほか 上映時間:112分 配給:2009米/ブロードメディア・スタジオ
精神分析医のカーラ(ジュリアン・ムーア)は、ある日、同じく精神科医の父ハーディング(ジェフリー・デマン)に、デヴィッド(ジョナサン・リス・マイヤーズ)という青年の患者を紹介される。下半身不随のデヴィッドは礼儀正しく、カーラの質問への受け答えもしっかりしている。
ところが、隣りの部屋からハーディングがデヴィッドに電話をして「アダムを呼んでくれ」と伝えたところ、突如デヴィッドは、顔つきと人間性を変貌させた。彼は、アダム・セイバーと名乗り、先ほどとは別人の口調になった。しかも車いすからスクっと立ち上がったのだ。解離性同一性障害(通称「多重人格障害」)の存在を否定するカーラは、その後も、くるくると人格を変えるデヴィッドに隠された秘密を解明しようとするが……。


なんでも解離性同一性障害というのは、原因がはっきりしないものが多いそうだ。それゆえ主人公にこの障害を与えた場合、当然、ミステリアスなドラマが生まれやすくなる。肉体的な病気なのか、精神的な病気なのか、はたまた狂言なのか、それとも何かほかに原因があるのか? くるくると人格を変える患者の正体に迫る展開は、観客の興味と好奇心を刺激する。
そんな「鉄板」な設定に、解離性同一性障害という病気自体を認めていない女性精神分析医をぶつけることで、ミステリーとしてのみならず、サスペンスフルなおもしろさを加えたのが本作「シェルター」だ。
カーラがある事実を突き止めた中盤以降、謎は医学や科学の見地を大きく飛び越える。そして、彼女の周辺に謎が飛び火するころには、もはや前半に見られた「精神分析医vs解離性同一性障害の患者」という手に汗握る心理戦は影を潜め、オカルト・ホラー映画としての本性を現す。
「解離性同一性障害の不可解さ」を担保に進む乱暴な展開は、現実との乖離が激しく、スリリングな人間ドラマを期待した人には興ざめかもしれない。
一方で、得体の知れない真実が明らかになる超常現象気分なドラマは、安っぽさと中途半端さが難点ではあるものの、おどろおどろしい作品が好みの人であれば守備範囲であろう。それなりに不気味で、それなりに驚きがあり、それなりに楽しめてしまう結末も、この映画の見どころのひとつ。あくまでも「それなりに」のレベルではあるが。
不信感と恐怖を募らせるジュリアン・ムーアの演技は安定抜群だが、多重人格役を乗りこなした若手実力派のジョナサン・リス・マイヤーズの怪演には、ムーア以上の高評価を与えるべきだろう。ホラーとしてのパンチ力不足を問わなければ、アナログタッチな演出で恐怖を増幅させたビジュアルセンスも好印象。人間ドラマ? サイコ・スリラー? ミステリー? オカルト・ホラー? ジャンルが判然としない「シェルター」という作品自身にも“多重人格”という言葉がお似合いだ。

お気に入り点数:55点/100点満点中

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