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映画批評「ウルフマン」

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2009.5.14 映画批評
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公開中の「ウルフマン」。
監督:ジョー・ジョンストン 脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー、デヴィッド・セルフ 撮影:シェリー・ジョンソン 美術:リック・ハインリクス 音楽:ダニー・エルフマン 出演:アンソニー・ホプキンス、エミリー・ブラント、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジェラルディン・チャップリンほか 上映時間:102分 配給:2010米/東宝東和
1891年、ロンドン郊外の農村に建つタルボット城に、舞台俳優のローレンス(ベニチオ・デル・トロ)は帰ってきた。兄ベンの婚約者グエン(エミリー・ブラント)から、兄が行方不明になったとの連絡を受けたのだ。結局、兄は無惨に切り刻まれた死体となって発見された。ある満月の夜、ローレンスも野獣に襲われて重傷を負う。その日以来、ローレンスは満月の夜になると体が異状をきたす身となった。ローレンスは献身的なグエンに惹かれていく一方で、以前から確執のあった父ジョン(アンソニー・ホプキンス)の不可解な行動に疑念を抱きはじめる……。


古くから語り継がれてきた伝説の狼男に、現代的な舞台は似合わない。1990年代のロンドンも、2000年の東京も、2010年のニューヨークも似合わない。したがって、本作「ウルフマン」が採用した100年以上前のロンドン郊外という舞台設定は正解といえよう。ヴィクトリア朝時代特有の街並や建造物、衣装、調度品、それにロウソクやガス燈の灯りなどは、狼男という古典的ダークヒーローとの親和性が高く、陰影に富んだ映像表現との相性も抜群。サスペンス仕立ての物語を紡ぐうえでも大きなアドバンテージになっている。
ローレンスが狼男に変身するシーンでは最先端CGを駆使。なかでも、捕らわれてイスに縛り付けられたローレンスが、身悶えしながら狼男に姿を変えるシーンのすごみときたらない。一方で、狼男のベースとなる容姿には完成度に優れた特殊メイクを実施。デジタルとアナログを巧みに使い分けた狼男のビジュアルは、いかにも着ぐるみ気分なB級路線とは一線を画し、狼男の野獣としての異様さを生々しく描き出す。豹変した狼男が人間を襲う場面では、血しぶきはもちろん、肉までもが飛び散る残酷描写を多用。スピーディにしてグロテスクな演出の数々は、その手のアクション×ホラー好む映画ファンにも喜ばれるだろう。
疎遠になっていた父ジョンとの確執や、殺人鬼と化した自分の身を案ずるグエンとの悲恋を織りまぜながら進む物語は、その身に悪魔を内包するローレンスの苦悩を掘り下げることにより、人間ドラマとしての魅力もアピール。主人公一族にまつわるある真実が明らかになって以降は、それまでほぼ主演の座をベニチオ・デル・トロに明け渡していたアンソニー・ホプキンスが、ここぞとばかりに無気味な存在感を光らせて、二大オスカー俳優のバトル(これぞ本当の競演?)という見せ場を作る。
安定した演技力に裏打ちされたベニチオ・デル・トロとアンソニー・ホプキンスの怪演に加え、紅一点、孤高の主人公に慈悲深く寄り添うグエンを演じたエミリー・ブラントの頑張りにも高評価を与えたい。

お気に入り点数:70点/100点満点中
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