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2010年上半期 「映画」未批評作品

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2010.7.4
批評し損ねた2010年上半期の作品を、一気にプチ批評!


「コロンブス 永遠の海」(ポルトガル、永遠の海)
http://www.alcine-terran.com/umi/
「新大陸の発見」で有名なコロンブスの没後500年に合わせて作られた、観客をノスタルジアへと誘う叙情詩のような作品。監督は現役最高齢となる101歳のマノエル・デ・オリヴェイラ。監督本人と監督の妻マリア・イザベルが晩年の主人公夫婦を演じていることもあり、コロンブスの謎を解く旅を通じて、固い絆で結ばれる夫婦の人生が見える。 60点
「苦い蜜」(日本)
http://www.nigaimitsu.com/
名作「十二人の怒れる男」を思わせる密室群像劇。演劇畑出身監督ならではの演出はユニークだが、ドラマに展開力がなく、謎解きの説得力も微弱。<毒><悪意><赤の他人>……そのあたりの調味料が不足気味。主演の金子昇が探偵にまったく見えないのも致命傷か。ビートルズ関連の蘊蓄が満載につき、彼らのファンには嬉しいかも。 40点
「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」(イタリア、スペイン)
http://www.don-giovanni.jp//
不世出の天才芸術家、ダ・ポンテ(劇作家)×モーツアルト(音楽家)の交流を描いたドラマを中心に、18世紀のヨーロッパを再現。虚実が入り乱れる映像構成や陰影を利かせた絵作り、そして本物のオペラ歌手が奏でる美声と、映像と音楽の両面で光彩を放つ。撮影は「地獄の黙示録」のヴィットリオ・ストラーロ。 65点
「グリーン・ゾーン」(アメリカ)
http://green-zone.jp/
マット・デイモン主演。イラクのバグダッドに駐留し、大量破壊兵器の捜索に執念を燃やす男のドラマ。暴かれていく陰謀が非現実的すぎるが、スタートからゴールまで息つく間もなく観客をのみ込んでいく展開は、さすがに「ボーン」シリーズのポール・グリーングラス監督。戦争映画ではなく、娯楽性を重視したサスペンスフルなアクション大作だ。 70点
「ザ・エッグ ロマノフの秘宝を狙え」(アメリカ)
http://www.heat-matsuri.com/
モーガン・フリーマン&アントニオ・バンデラス競演。なんともオーソドックスな怪盗もの。あまりに手の込んだ騙し合いは、呆れるほどにツッコミどころが満載。ご都合主義もここまでいけば立派なものか……。 35点
「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」(日本)
http://wwws.warnerbros.co.jp/shodo-girls/
見どころは「書道」にショーマンシップを添加した「書道パフォーマンス」。移り行く町や文化を背景に描きつつ、女子高生たちの青春にテーマをフォーカス。伝統を切り捨てるのではなく、新旧を融合した新たな文化として刷新していこうというメッセージが心地よい。 80点
「レギオン」(アメリカ)
http://www.legion.jp/
とある砂漠のダイナーで、突如謎の生物が襲来するというB級ホラー・アクショ。単にゾンビ映画とくくり難いのは、随所に旧約聖書を下敷きにした宗教色の強いエピソードがちりばめられているから。しかし世界の終末を描くには、あまりにドラマが局地的。救世主の解釈も曖昧すぎる。 40点
「あの夏の子供たち」(フランス)
http://www.anonatsu.jp/
優しく寛容で責任感の強い人間ゆえの孤独な最期と、突如、愛する者を失った家族の感情の揺れを描いた秀作。 自殺者数が12年連続で3万人を上回る日本でも、突如訪れる家長の死は他人事ではない。悲劇的な感傷を煽るのではなく、残された家族一人ひとりの気持ちに寄り添うような演出がすばらしい。 80点
「マイ・ブラザー」(アメリカ)
http://my-brother.gaga.ne.jp/
トビー・マグワイア、ジェイク・ギレンホール、ナタリー・ポートマン競演。壮絶な経験をした帰還兵とその家族の物語。愛する故人がある日、突然戻ってきたら、あなたはどうしますか? 流転する人間の愛と絆。その本質に鋭く切れ込んだ1本。『ある愛の風景』(2004年/デンマーク)リメイクだ。 85点
「アイアンマン2」 (アメリカ)
http://www.ironman2.jp/
ミッキー・ローク扮するライバルが暴れるモナコのシークエンスではすさまじい映像体験が味わえる。この男の父子愛に根づいた逆恨みの物語はなかなか見ごたえがあるが、肝心な主人公の行動理由が微弱。前作よりもスケールはアップしたが、ドラマは薄まったか。 50点
「ACACIA(アカシア)」(日本)
http://acacia-movie.com/
辻仁成監督、アントニオ猪木主演。親の愛を知らない少年と、息子を亡くした経験をもつ元プロレスラーの交流を描く。辻監督のナルシシスティックな演出がやや胃にもたれるが、肩の力の抜けた猪木の演技が宝物。 50点
「ダブル・ミッション」 (アメリカ)
http://www.w-mission.jp/
ジャッキー・チェンのハリウッド進出30周年記念作品。なんともチープでB級なスパイものながら、ジャッキーならではのコメディ&サービス精神旺盛なアクションが楽しめる。親子の物語は意外にも感動的で、家族で鑑賞するのにオススメ。 60点
「瞬 またたき」(日本)
http://matataki-movie.jp/
北川景子主演。喪失と再生をテーマにした若きヒロインの物語。北海道の自然を美しく捉えた映像に心を癒されるが、「記憶」にまつわる肝心のドラマが真実味に欠ける。「愛する者の死」という決して目新しくないドラマを見せ切るには、工夫が足りなさすぎる。 30点
「闇の列車、光の旅」(アメリカ、メキシコ)
http://www.yami-hikari.com/
粗野で凶暴で貧しい中南米の現実と、そのなかで輝く小さな愛。純真無垢な少女と精神的な監獄から抜け出した少年の魂の交流を描く。彼らを運ぶ列車は一体どこを目指しているのか? 希望、それとも? 人生の深淵に心がふるえる、痛くて、哀しくて、素晴らしい秀作。 90点
「ボローニャの夕暮れ」(イタリア)
http://www.alcine-terran.com/bologna/
家族の崩壊と再生を描いた物語。崩壊の原因は、家族3人それぞれの「未熟さ」と「不器用さ」だ。偏愛、過剰な自意識、コンプレックス……。安易な解決策は何一つ用意されていない。彼らが「未熟さ」と「不器用さ」を乗り越えるのではなく、受け入れることで再生していく姿が胸を打つ。 80点

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